Return To Forever: Romantic Warrior
中学、高校と音楽にどっぷり浸かっていたが、当時の情報源は雑誌とFMラジオ。雑誌はミーハー指向のものを除けばほとんど目を通し、”超絶テクニックのギターのアルバム”などという記述があろうものならば、「何としてでも聴かなければ」と思ったものである。そんな状況だったので、「バカテクのギタリスト」として脚光を浴びつつあったアル・ディメオラがアンテナに引っかかったのも当然の成り行きだった。彼のソロアルバムも良いが、ソロ活動前の演奏を追っかけていってたどり着いたのがチック・コリア率いるリターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)である。
本作は、後期RTFの最高傑作といってもいい。ネヴィル・ポッターの詩にインスパイアされてアルバムをトータル構成したという通り、全編に渡りストーリー性が感じられる展開である。4人が4人ともテクニック抜群で、遊び心にもあふれた演奏は理屈抜きで楽しめる。レニー・ホワイトのドラムスとディメオラのギターがかなりロック色を濃くしている一方、スタンリー・クラークは時折アコースティック・ベースのアルコ(クラシックのように弓を使うこと)奏法を交え、”中世の騎士”というイメージに繋げているのも面白い。チック、ディメオラ、スタンリーがいずれもアコースティック楽器を演奏していながら、曲としてはエレクトリックのイメージを感じさせるのは、RTFというトータルユニットの持つマジックかもしれない。
ディメオラは1979年のライブ・アンダー・ザ・スカイでチック・コリアのバンドメンバーとして初来日をする。必死の思いでチケットを手に入れ、わくわくしながら会場の田園コロシアムに出かけた。RTFの再構成といってもよいこのときの来日メンバーはチック・コリア(key)、アル・ディメオラ(g)、バーニー・ブルネル(b)、トニー・ウィリアムス(ds)という豪華な顔ぶれ。ディメオラ目当ての観客が多かったせいもあってか、彼のアコースティック・ギターソロのコーナーでは、ワンフレーズひいてはワァーという歓声が上がり、音楽性という点では期待していたほどではなかったのが残念だった。メンバーで一番光っていたのはバーニー・ブルネル。フレットレス・ペースでハーモニックスを多用する奏法は実に斬新に感じられた。当時、フレットレス・ベースといえばジャコ・パストリアスというイメージが強かったが、まったく違うスタイルで、「すごい!!」と思わせるユニークさがバーニーにはあった。自分が知らないプレイヤーでも、すごい人がごろごろしているんだなぁと思いながら家に帰ったのをよく覚えている。
後期RTFのコンセプトは、その後、チック・コリア・エレクトリック・バンドへと繋がっていくものだが、よりロック色の濃いRTFの演奏は、今聞いてもまったく色あせていないのがすばらしい。