専門書

ギターに関するものを中心に、楽器に関する専門書はなるべく手元に置くようにしている。製作に直接関係する内容のものから物理的なアプローチのものなど、範囲は多岐にわたるがいずれも資料としてはとても貴重で役に立つものだ。

先日、神保町の古書街を歩いていた時、ガレージセールで3冊200円と書かれた棚から見つけたのが、古い中公新書の『楽器の音色を探る』という本だった。あまり期待をせずに電車の中で読み始めると、なかなかどうして興味深い内容だ。
電子楽器の研究黎明期に、まずは既存の楽器の音色について調べなければという取り組みから書かれたもので、当時の新書としては珍しくなかった専門書への橋渡し的な役割を十分に果たす内容となっている。より詳細な内容は同じ著者による『新版 楽器の音響学』を手にすることになる。研究サンプルの入手性から、著者はフルートを中心とした管楽器研究に重点を置いており、弦楽器(特に撥弦楽器)に関してはあまり言及がないことが、この本をこれまで手にしてこなかった理由だが、ヴァイオリンやピアノに関しても面白い内容が含まれていて、「読まず嫌い」は改めていけないと痛感した。

アメリカで修行をしているとき工房のライブラリーが充実しているのがとてもうらやましくて、オフの日曜日はほとんど欠かさず、カリフォルニア大バークレー校近くの古本屋とCD屋を訪れていた。中でもMOE’S BOOKSは専門書を中心に実に豊富な品ぞろえ。すでに絶版になっているギター製作関連の本などを何冊も手に入れることができた。

おかげで1年に満たない滞在の割にはいい本が集まり、自分の工房の蔵書も少しずつ満足のいく内容になりつつある。Ervinの著書を含め製作に関する良書も数多くあるが、日本語訳となるとほとんど見当たらないのが現状。単に製作のことを知っているだけでなく、著者の製作スタイルを理解していないとなかなか翻訳が難しい分野だけに、せっせと外国語で専門書を読むことができるようにするほうが近道だろう。
フランスの製作家ブーシェがメモを取っていたノートも公開されていて手元にあるが、フランス語で手書きの内容を読むのは私には至難の業で、「ちゃんと読みたい」と思いながら手つかずのまま。せめて英語だったら…。



2 Comments

  1. 伊藤賢一 wrote:

    ブーシェのノートは相当気になりますw

    • ken wrote:

      >伊藤賢一さん
      次回いらした時、ご覧にいれましょう。
      ブーシェの書いたところは手書き文字ですが、内容についての解説はフレドリッシュが書いていてこちらは活字になっています。まずはこちらからと思って読み始めたこともありますが、慣れないフランス語なのでほとんどの単語を辞書でひかなければいけなくて挫折してしまいました。
      フランス語ができる相方に、という選択も頭をよぎりましたが文量がかなりあるのでなかなか難しいです…。

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