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インターネットなど影も形もなかった70年代前半。映画や音楽、演劇の情報誌がいくつか創刊され、東京では71年創刊の『シティロード』と72年創刊の『ぴあ』が勢力を二分していた。
今では想像できないと思うがこのような情報誌が登場する前は、例えば映画ならば新聞の映画館上映予定欄が唯一の情報源。当然すべての情報が網羅されるはずもなく、マイナーな映画館や演劇情報などはよほど丹念に探すつもりでいないと、ほとんど目にすることもなかった。

情報誌の登場によってそんな状況は一変する。東京およびその近郊の映画、音楽、演劇情報を簡単に手に入れられるようになったのは画期的なことだった。マイナーな劇場やライブハウスの情報が多かったので、自然のこれらの雑誌が当時にサブカルチャー的なメディアとして機能していったのも何ら不思議ではなかった。

よりマニアックな方向に転換していったシティロードに対して、ぴあはやや軽めで面白おかしく、そして幅広く役立つ情報を提供するという路線だった。情報量の多さから私はぴあ派だったが、読者の投稿をもとに構成されたページ欄外の「はみだしYouとPia」が面白かったのも魅力の一つ。授業中にこっそり読みながらしょっちゅうクスクス笑っていた。それまで月刊だったものが高校生のころに隔週刊になり、先の予定を立てるには少々不便に感じたところもあったけれど、一冊で網羅する範囲が広がったぶん情報は充実していった。

音楽、映画、演劇を見に行くのに欠かせなかった情報誌も、インターネットの普及とともに紙媒体のものがどんどんとすたれていってしまい、80年代後半から90年代にかけてどんどんと休刊に追い込まれていく。私もさんざん楽しませてもらったのに、いつの頃からか手に取ることがなくなってしまった。そしてついにこの手の情報誌として象徴的存在といってもよい『ぴあ』が7月21日発売号で休刊となった。

少しオーバーに聞こえるかもしれないが、紙媒体の一つの文化が終焉を迎えたような気がする。ありがとう『ぴあ』。



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