●Astor Piazzolla: The Rough Dancer and The Cyclical Night
Astor Piazzolla (bandneon)
Fernando Suarez Paz (vln)
Pablo Zinger (p)
Paquito D'Rivera (as, cl)
Andy Gonzalez (b)
Rodolfo Alchourron (g)
本作は、『Tango: Zero Hour』、『La Camorra』と並ぶ、いわゆるピアソラ3部作の一つ。他の2作品の強烈な緊張感あふれる仕上がりと比較すると、比較的聞きやすい作品。バンドネオンを中心に強靭なリズムが刻まれ、躍動するヴァイオリンのメロディ展開がとても印象的だ。早いパッセージの後に、メランコリックなフレーズが続いたりするのも、「泣きの音楽」を好む日本人にはピッタリとも言える。
ピアソラのすばらしさは、その音楽の展開から、色彩や、人間の心理描写をイメージさせる点にあると思う。一つ一つの独立した楽曲から伝わってくるというよりは、アルバム全体の流れがストーリー展開となって自分の中に入ってくる感覚は、他ではあまり経験したことがない。残念ながら、生の演奏を聴く機会はなかったが、映像を手に入れてじっくりと演奏を見てみたいアーティストの一人だ。