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April 24, 2006

●Bruce Cockburn: Salt, Sun and Time

BruceCockburn_salt.jpg

Bruce Cockburn (vo. g)
Eugene Martynec (g, key)
Jack Zaza (cl)

 カナダのシンガー・ソング・ライターというと、ゴードン・ライトフット、ニール・ヤングやジョニ・ミッチェルといった名前がすぐに思い浮かぶ。あるとき、カナダの女性ギター製作家、リンダ・マンザーが「カナダのカリスマ的シンガー・ソング・ライターのブルース・コバーン」にギターを製作した時に、どれだけ興奮したかということをインタビューで述べているのを読んだことがあった。「製作家がお気に入りとあらば、これは聴かずばなるまい!」と探してみたものの、なかなか見当たらない。結局、最初に手に入れたのはアメリカ滞在中、いつものカリフォルニア大学バークレー校そばの中古CD屋だった。ところが、エレクトリック主体であまりパッとしない演奏がずっと続く。「こんなもんかぁ」とがっかりしつつ、ブルースのことは忘れてしまった。

 日本に戻り、いろいろと調べると、アコースティック・ギターの第一人者中川イサト氏が初期のブルース・コバーンの影響を受け、当時、出版したギターの楽譜集にも何曲か取り上げたとのこと。もう一度聴いてみようと思い、探し当てたのが本作だった。ほとんどギターとボーカルのみの構成ながら、ブルースの音楽世界が目の前いっぱいに広がるような感覚はなんなのだろう。敬虔なクリスチャンでもあるブルースは、デビュー当初から70年代終わりくらいまでは、非常に宗教色の強い歌詞を書いている。無神論者の私にとって、信仰からくるものを理解するのは難しいが、美しいメロディと朴訥とした声のバランスの妙は、歌詞の理解とは別の次元で、心に響いてくるものがある。80年代に入ると、キリスト教色は薄まり、よりロック色の強い音楽へと向うのだが、政治的なメッセージを歌に込めるようになっていく。

 時折オープンチューニングを用いる、ブルースのギタースタイルは独特のもので、北米東海岸の湿度が高く、しっとりした空気と、彼が初期の頃に愛用していたカナダのジーン・ラリビー製作のギターの音がぴったりと合う。倍音がすっきり整理され、重心の低い音は、ジャズ・テイストを含んだフレーズをいっそう際立たせるものだ。ギターのラインがボーカルとハモる構成など、比類のないほどすばらしい。


BruceCockburn_.speechlessjpg

 ブルースの最近の動向を調べてみると、昨年、ギターのインスト・アルバムをリリースしたことを知った。ソングリストを見ると、初期から毎作数曲ずつ入れていたインストものを、ギターソロで演奏しているようである。エレクトリックよりは、アコースティック・ギターの名手として活躍して欲しいと思っていただけに、これは嬉しい情報だ。さっそく、入手しなければ・・・。

コメント

本日早速注文しました。
楽しみです。

>なかとみさん
いらっしゃいませ。
ブルースは、初期の頃はわりと同じスタイルを通していたので、もし、このアルバムがお気に入りであれば、その前後のものもお聴きになるといいと思います。

ブルースのインストアルバム『Speechless』を入手しました。まだ聴いていませんが、ライナーで確認をしたところ、全15曲中、新しく録音したのは3曲。残りのうち1曲はこれまで日本盤でのみ発表していたものの収録です。それ以外のものは、過去に発表したものを入れているようです。

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