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April 21, 2006

●Keith Jarrett: My Song

KeithJarrett_mysong.jpg

Keith Jarrett (p)
Jan Garbarek (ts, ss)
Palle Danielsson (b)
Jon Christensen (ds)

 新しい音楽を聴き始めるきっかけは、些細なことが多い。FM東京(現在のTokyo FM)の夜11時代の番組で、某ウイスキーメーカーがスポンサーだった番組があった。その番組の中で流れるCMで、「・・・・暖炉の前に腰掛ける・・・・キース・ジャレットのカントリーを聞きながら(BGMにこの曲が流れている)、グラスに○○ウイスキーを注ぐ。(ガラスがカランという効果音)・・・」というナレーションがあった。思い描くイメージにピタリとこの曲がはまり、おしゃれな大人の時間をうらやましくも思ったものだ。そのCMが、このアルバムへと導いてくれたのだった。

 クラシックやジャスでは、名門レーベルというものが存在し、そのレーベルごとに、音作りを含めた強い個性がある。ジャズのレーベルで一番好きだったのが、このアルバムをリリースしているECMというドイツのレーベルだ。1969年創立のECMは老舗と呼ぶにはまだ歴史が浅いが、マンフレート・アイヒャーというカリスマ性のある創立者が、プロデューサーとして君臨し、アーティストと喧々諤々の論争をしながら、作品製作をしていく様子は、数々の伝説を生んだほどだ。水彩画のような透明感のある知的なECMサウンドは、ヨーロッパ・ジャズの一つのシンボル的存在として、アメリカのジャズと対比することができよう。マンフレートはギターものに対する思い入れも強く、ラルフ・タウナー、ジョン・アバークロンビー、(初期の)パット・メセニーを初めとして、数々の名作を世に出してきた。

 このアルバムを録音する1年ほど前に、キースは5年間活動を続けたレギュラー・クァルテットを解散し、かつて、同じECMで『ビロンギング』を録音したメンバーを再び集め、レコーディングに入った。インプロビゼーションによって繰り広げられる独特のソロ・ピアノの世界をすでに確立してしまったキースにとって、新しいメンバーで、別の方向へと向う演奏をすることは必然だったのかもしれない。キース以外はいずれも北欧出身の実力派メンバー。特に、サックスのヤン・ガルバレクはECMレーベルでのセッションで、数々の名演を残している。ソロでは自由奔放に弾いているキースも、ヤンのサックスをうまくサポートしているのが印象に残る。ベースにあるのはリラックスしたムードだが、時折激しく音をぶつけ合い、きらりと光る緊張感あふれるプレイも随所に見え隠れする。

 暖炉の前で、ロッキングチェアに腰を下ろして、ウイスキーグラスを片手にこのアルバムを聴きたいという思いは、まだ、かなっていない。

コメント

こんにちわ。
キースジャレットは、私も好きで、ライブ聴きにも行きました。(やっぱり派手に唸ってましたが。)
ECMのサウンドは、どんなシステムで音作りしてたのだろう、とすごく気になります。

>純之助さん
いらっしゃいませ。

「キース・ジャレットかグレン・グールドか」というぐらい、うなり声を上げながら弾いていますよね。個人的には、あのだみ声でのうなりがなければもっといいのにぃと思ってしまいます。

このアルバムは、オスロのタレント・スタジオで録音されたものですが、ECMというと同じオスロのレインボー・スタジオが有名です。割合最近、機材を一新するために新しいところに移ったそうです。今ですと、ProTools HDというシステムがレコーディング機材のスタンダードですが、ひょっとすると、ECMのこと、別のこだわりで、違う機材を入れているかもしれません。

ただ、1950年代のBlueNoteのジャズ・アルバムを聴くと、機材面ではビックリするようなものがなかったはずなのに、すばらしい音質なのにはビックリします。今のように、音を積み上げていくのではなく、肉をそぎ落とす「引き算」による、音作りをしているように感じます。結局のところ、機材云々よりも、アーティストなりエンジニアの感性と技術なのでしょうね。

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