●Pentangle: Basket of Light
今まで聞いていなかったものを聴くようになるきっかけはさまざまだが、私の場合、自分の好きなプレイヤーが影響を受けた音楽に手を伸ばすというパターンが多い。1960年代のブリティッシュ・フォークへと導いてくれたのは、ポール・サイモンである。ご存知のように、ポールは、サイモン&ガーファンクルとして、1960年代前半から1970年までの間、数々のヒットを飛ばしたスーパーデュオである。
S&G名義のアルバムに唯一入っていたポールのギターインスト曲が「Anji」だった。昔は、この曲を完璧に弾ければプロになれるといううわさまで流れた曲である。そのポールが、影響を受けたのがバート・ヤンシュの「Anji」であったり、もともとの作曲者のデイヴィー・グレアムであったりという情報が耳にはいると、バーとを追っかけておくと行き当たったのが、ペンタングルである。ジョン・レンボーンとバート・ヤンシュという素晴らしいギタリスト二人を擁するというグループとのイメージが強かったが、ジャッキー・マクシーのボーカルの独特の存在感が際立っているのに圧倒された。
ペンタングルとしては、デビューアルバムの評価も高いが、実験的な取り組みもある本作は、このグループの最高傑作の名に恥ずかしくない仕上がりであろう。ジャズやブルースに繋がる要素と、ケルト音楽の影響が複雑に交じり合った音楽は、イギリスの独特のどんよりとした気候を肌で感じさせるものを持っている。アメリカルーツのブルースとは根本的に違いつつも、「これもやはりブルース」と思わせるところは、音楽としての芯の強さなのかもしれない。
伝統を継承しつつも、革新的なものに取り組むペンタングルの斬新さは、力強く、聴くものにせまってくる。