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April 27, 2006

●南 佳孝: 摩天楼のヒロイン

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南 佳孝 (vo, g, p)
矢野 誠 (p, key)
林 立夫 (ds)
小原 礼 (b)
細野 晴臣 (b)
鈴木 茂 (g)
駒沢 裕城 (dobro, steel g)
松本 隆 (per, arr)

 中学生の頃、歌謡曲以外の音楽映像を唯一流していたのが、地元のTVK(テレビ神奈川)だった。川村尚が進行する洋楽のPVを流していた『ポップス・イン・ピクチャー』と、南佳孝が司会をしていた『ファンキー・トマト』というのが双璧の音楽番組。ファンキー・トマトでは、アシスタントに売り出したばかりの竹内まりあがついていた。湘南地方の番組らしく、サーフィンのコーナーがあったりと、当時の若者文化をフィーチャーしたものだったが、毎回、番組の最後に、南佳孝が弾き語りで1曲歌うのがとても気に入っていた。シンプルな編成で、パーカッションがついたり、キーボードのサポートがあったり、時にはラジという女性シンガーとのデュエットもあった。
 ちょうど、洋楽でもAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)と呼ばれるジャンルが出始め、ボズ・スキャッグスやボビー・コールドウェルなどがこのスタイルをリードしていた。邦楽はというと、フォークからニューミュージックへと移行している段階で、荒井由美(ちょうど結婚をして松任谷由美になったようなタイミング)や中島みゆきなどが、中心となって活動していた。そんな中、南佳孝はとても都会的なセンスで、独特の雰囲気を持っていた。それが、中学生や高校生の時期にはとてもかっこよく映り、大人の雰囲気の香りを楽しんだものだ。

 このアルバムのサポートメンバーを見ればわかるが、元はっぴいえんどの3人が要となっている。特に、松本隆は、本作がプロデューサーとして取り組んだ最初の作品である。その後、太田裕美を初め松田聖子などに数々の詞を提供し、ヒットメーカーとして大活躍することになるのは周知のことと思う。

 LPでの発売時点では、A面がHero Side、B面はHeroin Sideという構成だった。歌詞やアレンジも物語性を非常に意識しており、舞台上での演技を見ているかのように感じさせる仕上がりが面白い。ジャリッとしたした感触を聞かせるギターの音も新鮮で、決して密ではない音空間なのに、隙間を感じさせないのは不思議だ。

 その後、「モンロー・ウォーク」や「スローなブギにしてくれ」などで、メジャーヒットを飛ばすが、この人の持ち味は、弾き語りなどのシンプルなスタイルにあるような気がする。ただ、音を積み上げていくコンセプトで作り上げたアルバム『冒険王』は、別方向のものながらとてもいい。これは、いずれまた取り上げてみたい。

 2000年以降は、ボサノバの曲を演奏したりと、いい意味で力を抜きながらお気に入りのスタイルの音楽をやっているように感じる。今でも、湘南に拠点を置き、海の匂いを感じさせる南佳孝。一度は、生で演奏を見てみたいアーティストの一人だ。

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