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May 08, 2006

●Paul Simon: Song Book

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Paul Simon (g, vo)

 サイモン&ガーファンクルを聴くようになったのは中学生の頃で、すでに解散してから数年たち、二人それぞれがソロアルバムを発表していた。解散に至る経緯なども含め、音楽界としても振り返る余裕ができたこともあってか、ラジオでかぜ耕士(当時、ニッポン放送の深夜番組「たむたむたいむ」の人気パーソナリティーだった)がナレーションで「サイモン&ガーファンクル・ストーリー」という連載番組(半年以上続いたように記憶している)を放送していた。その時代ごとの二人にまつわるエピソードを交えながら、当時の曲をかけるという番組だった。ポール・サイモンとアート・ガーファンクル、そしてプロデューサーのロイ・ハリーの間のずれがどのように生じていったのかなどについても触れていた。

 マイク・ニコルズ監督の『卒業』の音楽を全編担当することで、二人の評価はゆるぎないものになっていったが、その一方で、アートが一時的に音楽から離れ、役者としてマイクがメガホンを取った『キャッチ22』や『愛の狩人』へと出演することになったのは、なんとも皮肉にようにも思える。当時は、マイクやアートが映画へ移行しなければ、この素晴らしいデュオが解散には至らなかったのに、とずいぶんとアートに対して悪い印象を持ったものだ。

 さて、本作はS&G名義で活動を始めて間もない頃、ポールが一人で全編弾き語りでおこなった録音。ファーストアルバムが不振だったことに失望したポールはしばらくイギリスに渡り、しばらく書き溜めていた曲を一人でレコーディングする。ギター一本にボーカルというシンプルな構成は、取り上げている楽曲の影響も大きいが、ファーストアルバム『水曜の朝、午前3時』と通ずるものを強く感じさせる。美しいメロディにのせて淡々と、また、あるときは激しい口調の歌声は、強いメッセージ性を含むものである。

 ポールとアートの二人とはまったく別に、ファーストアルバムに収録されていた「サウンド・オヴ・サイレンス」にエレクトリック・ギターやドラムスをかぶせて編曲し、シングルリリースされたものが大ヒットとなったことはよく知られていることだが、失意の底にありながらポールが製作したアルバムとはまったく違うサウンド、当時流行しつつあったフォーク・ロックスタイルの編曲が世に受けたということは、なんとも皮肉である。

 本作は、長らくCD化されなかったが、2004年にようやくリリースされた。オリジナルのLPに対して、CDのジャケットでは写真が裏焼きになっているように使われている。ひょっとすると、オリジナルのものが裏焼きで使われていたのかもしれないが、アルバムタイトルの字体なども変更され、昔のカシッとしたデザインとはずいぶんと趣きが変わった。いずれにせよ、貴重な音源を再びCDで聴くことができるのは嬉しいことだ。

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