« Cannonball Adderley: Somethin' Else | main | Edward Gerhard: Counting the Ways »

November 14, 2008

●Edward Gerhard: Night Birds

EdGerhard_Night.jpg

Edward Gerhard (g)

ギター製作の第一歩を踏み出すのに、もっとも大切だった出会いは1997年、東京池袋の楽器フェアの会場でのことだった。自らのギターのプロモーションも兼ねて、アメリカからErvin Somogyi氏が来日していたのである。当時、ギター製作の勉強をどうしたらいいかと模索していた私は、すばらしいギターを世に送り出し続けているアーヴィンにアドバイスを求めるべく話しかけたのだった。

このときの内容や、私がどうやってギター製作の道を歩み始めたのは置いておくとして、日本に来る際にアーヴィンが自分のギターの音を聴くサンプルとして持っていたアルバムが2つあった。ひとつはSteve Hancoffの『Steel String Guitar』、そしてもう一枚が本作だった。

アーヴィンのギターの音はマイケル・ヘッジスやアレックス・デグラッシ、ウィリアム・アッカーマンなどのウィンダムヒル系のギタリストの音楽でなじみがあったが、彼のギターの愛用者としてエド・ガーハードの名前は当時は知らなかった。

フィラデルフィア生まれのエドが最初にギターを意識したのは10歳のとき。テレビでクラシック・ギター界の巨匠アンドレス・セゴビアの演奏を見たのがきっかけだった。それまではポップスばかりを聴いていた少年が、ギター一本で繰り広げられる音楽に魅了された瞬間だ。
14歳のとき、ようやく自分のクラシック・ギターを手に入れた彼は当然のようにクラシック・ギターを習うようになる。しかし、しばらくして伝説のブルースマン、ミシシッピ・ジョン・ハートや鬼才ジョン・フェイヒの音楽に触れ、急速のその関心はクラシックからスティール弦ギターの演奏へと移っていく。レコードを聴いてコピーをしたり、友人に習ったりしてギターの技術を磨きながら、コーヒーハウスなどでソロもしくは友人たちと一緒に演奏をするようになっていった。
その後、現在も居を構えているニューハンプシャーへと移り住み、様々な形で演奏を続けながら自らも曲作りをどんどんと進めていく。特に、ジョン・フェイヒから強く影響を受けたと自ら言っているが、変則チューニングによってギターの美しい響きをどう生かすかを良く考えていたという。

本作はそんなエドが1987年、31歳のときにまさしく満を持して発表した初のソロアルバム。ボストン・グローブ紙のレコード評欄で年間のベスト10アルバムに選ばれるという高い評価を得た。リリース直後には、Windham Hillレーベルから新たにリリースされるGuitar Samplerアルバムへ参加しないかという声がかかり、Handing Down(ソロ3作目となる『Luna』にも収録されている)という曲を演奏・収録した。Windham Hillのアルバムを介してエドの名前を知ったというリスナーも数多くいたことだろう。

エドの魅力はなんといってもギターの音の存在感。決してギミックな奏法を用いたり、複雑なことを積極的にやっているわけではない。一音一音に、自分の持っているものすべてを凝縮して音楽を紡ぎだす、そんな彼の姿勢がひしひしと伝わってくる。弦をはじいてギターが音を発した瞬間に音楽になる、彼の演奏を聴くたびにいつも思うことである。

一部の楽曲ではGuildの12弦ギターを重ねているが、メインで使っているのはErvin SomogyiのDreadnoughtモデル。現在は座って演奏するのに適するようにボディのラインを一般的なドレッドノートタイプから変更したModified-Dというモデルが主流であるが、80-90年代初頭くらいまではドレッドノートモデルもかなり製作していて、エドは直接アーヴィンと相談しながらギターの仕様を決めていったという。
90年代後半になるとエドはBreedloveのエンドースメントを受け、ライブなどではこのギターの出番がなくなってしまったが、「今でも一番好きで大切なギターのひとつだよ」といい、アルバムでもここぞというときには登場している。

1998年3月に初来日をしたエド。そのときは中川イサト、小松原俊、プレストン・リードそしてエドの4人によるツアーだった。この年の5月以降にアメリカにわたり、アーヴィンの元でギター製作の勉強をするつもりだった私は、もちろんこのライブに足を運び、エドといろいろ話をすることが出来た。このときのことも含めてエドとのエピソードなどについては、次に紹介するアルバムで触れることにしたい。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)