●NEWS●

アメリカを代表するギター製作家Ervin Somogyi氏が、8年間以上の年月をかけてギター製作についてまとめた本を2009年7月に刊行することになりました。『The Responsive Guitar』『Making the Responsive Guitar』の2冊で、Somogyi氏のHPより購入が可能です。従来のハウツー本とは異なり、具体的な作業についての言及のみならず、ギターを製作する上で理解しておくべき原理原則などを平易な表現でまとめた本書は、他に類を見ないものとなっています。著者のコメントにも「次世代の製作家たちにとってバイブルのようなものとなるだろう」とあるように、ギター製作に関わる人にはぜひとも読んでもらいたい本です。なお本書は全編英語のみですのでご注意ください。
またSomogyi氏自身のナレーションによるプロモーションビデオがYouTubeに公開されていますのであわせてご覧ください。

Ken Oya Acoustic Guitarsの音は以下のCDでお聴きいただくことができます。

伊藤賢一さん
最新作『かざぐるま』ではModel-Jを、3rdアルバム『海流』ではModel-FとModel-Jにて演奏されております。

竹内いちろさん
1stアルバム『竹内いちろ』で全曲Model-F(12Fjoint仕様)を使っていただいております。

押尾コータローさん
2008/1/1リリースの『Nature Spirit』に収録されている「Christmas Rose」でModel-Jを弾いていただいています。

April 18, 2006

●Yardbirds: Little Games

Yardbirds_little.jpg

Jimmy Page (g)
Keith Relf (vo)
Chris Dreja (b)
Jim McCarty (ds)

 すでに死語となった感があるが、ロック三大ギタリストとは、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジのことを指す。ジェフ・ベック命だった私は、エリックもジミーもまったく眼中にはなかったのだが、この3人が在籍したことのある伝説のグループ、ヤードバーズはどうしてもチェックしておかなければいけないバンドだった。初代ギタリストのエリックが脱退した後、ジェフが参加するのだが、そのうちベーシストがバンドを離れたため、ジミーがベーシストとして参加することになる。三人のうち、同時期にバンド在籍していたのは、このときのジェフとジミーだけだ。
 当時のヤードバーズの様子は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督のカンヌ映画祭グランプリ受賞作品『欲望』で、見ることができる。「動くヤードバーズが見られる」と知ると、ちょうどタイミングよくテレビの深夜映画で放送されたのであった。眠い目をこすりながらテレビの前に座って映画を見たのだが、中学生にはこの映画自体はさして面白いものには映らなかった。ただ、お目当てのヤードバーズのことだけはさすがに覚えている。確か、地下室でバンドが"Stroll On"という曲を演奏しているシーンなのだが、ジェフは途中でギターを叩き壊す。今でこそ、ギター製作という仕事をしているので、どんなにいい音楽をやっていてもギターを壊す人は評価しないが、当時はこの道を選ぶことなど夢にも思っていなかったので、ただただ「おぉ、すごい!!」と思ったものだった。

 その後、ツアーの途中で体調を崩したジェフが辞め、ジミーがギターを担当してバンドの主導権を握っていく。本作は、ジミー中心のヤードバーズが唯一残したスタジオ盤である。メンバー間の関係がギクシャクしていたり、プロデューサーのミッキー・モストがどんどんポップ志向になっていくのに対する反発が強まっていたなど、バンドの状態は決してよくなく、アルバム全体としてのコンセプトの統一感に欠けるのは事実だが、きらりと光って印象に残る楽曲も多い。ジェフの時代は、ストレートなブリティッシュ・ロックというイメージが強かったが、ここでは、ブリティッシュ・トラッド・フォークやインド音楽の影響が随所に見られる。演奏面でも、ヴァイオリンの弓を使ってエレキ・ギターを弾く奏法なども取り入れられている。これらは、まさしくレッド・ツェッペリンのファーストアルバムへと繋がっていくものだ。このアルバムを初めて聴いたのは、音楽評論家渋谷陽一氏の番組。当時は、LPの全曲をかけることも珍しくなかったのだ。さまざまなスタイルが融合し始めた(必ずしも、すべてがしっくりといっていたわけではなかったが)ヤードバーズの音楽は、それまで知っていたものとはまったく別のものだった。それまでは、「ジミー・ペイジ? やっぱりジェフでしょう。」と思っていたのが、「やるじゃない、ジミー」と認識を新たにしたのだった。

 CD化に当たっては、オリジナルのアルバムとは別に、シングルのみでリリースされていた曲も追加収録されている。ただ、こちらはポップ志向がいっそう強いため、曲の流れからも浮いた感じがしてしまうのは否めない。
 ジミーを再認識しながらも、レッド・ツェッペリンはほとんど聴かなかった。ジェフに対する義理立ての気持ちが強かったからなのかは定かではないが・・・。

April 17, 2006

●Larry Coryell: Tributaries

LarryCoryell_tributaries.jpg

Larry Coryell (g)
Joe Beck (g)
John Scofield (g)

 ジェフ・ベックの次に、思い切りはまったギタリストがラリー・コリエルである。ジャズ・ギターというとウエス・モンゴメリに代表されるようにアーチトップ・ギターを抱え、クリーンなトーンというのが一般的なイメージだった。そこにロックのイディオムを持ち込んだのがラリー・コリエルとジョン・マクラフリンだ。まだ、日本ではフュージョンとかクロスオーバーという言葉が耳馴染みない頃、FMラジオから聞こえてきた、ラリーの演奏は、ひずんだ音のギターが縦横無尽に駆け回るような、新鮮な響きだった。

 ディメオラが初来日した翌年、ライブ・アンダー・ザ・スカイでは、なんと「ラリー・コリエル&ジョン・マクラフリンナイト」というプログラムが用意された。前の年は、チケット発売日の昼休み、学校にある公衆電話(当時はもちろん携帯電話などなかった)から必死に駆け続けてようやくチケットを取ったが、席はスタンドの真ん中辺り。ステージは遥かかなただった。今年は絶対にいい席で見るぞ、と思い、母親を拝み倒して、チケット発売開始の10時に繋がるまで電話をかけ続けてもらった。その甲斐もあって、席はアリーナの前から2列目の中央。もう、この席のことを考えただけでも興奮してしまうほどだ。

 ライブが近づいても、この晩のプログラムには「出演者:ラリー・コリエル(g)、ジョン・マクラフリン(g)、クリスチャン・エスクーデ(g)」とあるだけ。会場はテニスコートスタジアム。「広いステージにギター3人だけ??!」、おまけに最後のクリスチャン・エスクーデは名前も聞いたことがない。不安と期待が入り混じりながら、夕方の田園調布駅から会場の田園コロシアムへの道のりを急いだ。
 最初は、ラリー・コリエルのソロ。ステージ中央に三つ並んだ椅子、オヴェイションのアダマス(ギターのモデル名)を持ったラリーが登場すると、その一つの座り、おもむろにギター一本での演奏が始まる。チック・コリアの『スペイン』やジョン・コルトレーンの『ジャイアント・ステップス』など、とてもソロではできないと思うような曲が次から次へと飛び出す。おまけに、目の前で演奏しているにもかかわらず、とても一本のギターから出ているとは信じられないような音数。ただただ、あっけにとられるだけだった。後で聞いた話しによると、渡辺香津美氏もこのライブを見に来ていて、あまりのすごさに一週間寝込んでしまうほどだったという。
 ライブは、その後、ジョンとクリスチャンのデュオ、3人でのアンサンブルと盛りだくさんの内容で、アコースティック・ギターのすばらしさを満喫して帰り道についた。

 さて、前置きが長くなったが、本作は、1979年の作品。ラリーは70年代中頃からスティーブ・カーンやフィリップ・キャサリーンなどと、アコースティック・ギターによるデュオアルバムを製作しているが、これもその路線の延長線上にある。アコースティック・ギター3本の演奏というと、ディメオラ、マクラフリンとフラメンコ・ギタリストのパコ・デ・ルシアによるスーパーギタートリオが有名(実は、一時期ディメオラではなくにラリーが入って三人で演奏していたこともある)だが、こちらは、ジャズ・フュージョン界で活躍していたジョー・ベックと、今やコンテンポラリースタイルのジャズ・ギターでは第一人者といってよいジョン・スコフィールドによる演奏。スーパーギタートリオがインプロビゼイション(アドリブ)中心に展開しているのに比べ、こちらは、きちんとアレンジをした印象が強く、アンサンブルもすばらしい。音の重ね方が、即興演奏では出てこないような緻密な構成になっているのだ。全体的に、ジャズ・ブルースともいえるスタイルで、思わずうなるほどのかっこよさ。ちなみに、ジョンはほとんどアコースティックでの演奏をおこなっておらず、このレコーディングでも、ギターがなかったためにラリーのものを借りたという。

 CDでは、もともとのTributariesに含まれていた7曲に、1978年のスイス・モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブ収録とスタジオ録音を交えた"European Impressions"(邦題『ヨーロッパの印象』)のB面の4曲を加えた11曲入り。Tributariesではオヴェイションのアダマスを、後半の録音では、オヴェイションのカスタム・レジェンドを弾いており、音がかなり違うのも興味深い。ちなみに”European Impressions"のA面に入っている曲は、ラリーとスティーブ・カーンの共演盤”Two For the Road"に収録されている。こちらも名盤なので、いずれ紹介したい。

 アダマスのネックが3本並んだジャケット写真は本当にかっこよかった。「いつかはアダマス」と、高校生の頃から思っていたものだった。それから10年ほどして、いい縁があって本物を持つことができたときの嬉しさといったらなかった。

April 16, 2006

●Juanjo Dominguez: Plays Astor Piazzolla

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Juanjo Dominguez (g)

 ギターを製作するようになって、以前よりもナイロン弦を用いた、クラシック・ギターやフラメンコの演奏を聴くようになった。同じような外見でも、自分で作るスティール弦のギターとは内部の構造も違い、音作りのアプローチも異なる。ナイロン弦のギターは、弦の特性上、ふくよかな低音は出しやすいが、ピンと通る高音を出すのが難しい。一方、スティール弦では、キンとした音が出しやすい一方、ふくよかな低音を出すのが大変で、ここが製作家の腕の見せ所となる。いずれにしても、「いい楽器」というのは低音から高音までバランス(音量だけではなく)が取れているものなのである。まったく別方向からのアプローチを持つ同じ「ギター」というものを見つめることで、それまでの自分の考え方から一歩離れてモノを理解するきっかけとなるものだ。

 ここのところ、一番のヘビーローテーションでかけているのが本作。ナイロン弦のギターで、「ピンッ」と音が立っている好例である。ファンホ・ドミンゲスはアルゼンチンのギタリストで、クラシックに分類するのがいいのかもしれないが、ピアソラ曲集ということもあり、今回はワールド・ミュージックにカテゴライズした。

 ピアソラの曲はクラシックやジャズのプレイヤーがよく取り上げ、名演も多い。その中においても、ファンホのこの作品の仕上がりは特筆すべきものだ。同じアルゼンチン人として、ピアソラが何を考え、感じて曲を書いたのかということを意識し、ギター曲にアレンジしたという。タンゴ五重奏団でバンドネオンやヴァイオリンが繰り広げていたスリリングな演奏パートまでも、ギターの音だけで表現し、単調さなどまったく感じさせず、恐ろしいばかりの緊張感を最初から最後まで持ち続けている。音の立ち上がりとスピード感が全面に出た演奏は、まさしくナイロン弦の持ち味を最大限活かしたもので、これほどピタリとはまる感覚も珍しい。曲によってはギターを2本、3本と多重録音しているが、自分の演奏を重ねたからこそ、ここまでピタリと合ったものになっているのであろう。

 音数も多いので、音楽が「饒舌すぎるのでは」と心配してしまいそうだが、それも杞憂に過ぎないとすぐに気付く。すばらしい演奏テクニックに余りある歌心が、その音にはある。アルゼンチン人にとってタンゴ音楽、そしてピアソラの音楽がどのようなものなのかを、ファンホのギターがわれわれに投げかけている。

April 15, 2006

●Crosby, Stills, Nash & Young: 4 Way Street

CSNY_4way.jpg

David Crosby (vo. g)
Graham Nash (vo. g)
Stephen Stills (vo, g)
Neil Young (vo. g)
Johnny Barbata (ds)
Calvin Samuels (b)

 中学1-2年の頃、東京の浜松町にある世界貿易センタービルまでヤマハのギター教室に通っていたことがあった。グループレッスンだったが、たいていの人は長続きせず、気がつくと私一人という感じで、その分、たくさんのことを教えてもらえてよかった。それまでは、日本のフォークを中心に聴いていた私に、海外のすばらしい音楽を押して得てくれたのが、このときの講師の人だった。確か、小泉さんというひとで、教室で教えている以外にもヤマハ関連のイベントでサポートギタリストとして活躍していたと記憶している。その小泉先生が「このギターはかっこいいぞ!」と教えてくれたのが、クロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤング(CSN&Y)だった。中でもお勧めは『組曲:青い眼のジュディ』という曲だということだったので、お小遣いをためてレコード屋に足を運び、探してみるとこの曲が入っているアルバムが2枚。片方はLP1枚で2,500円。本作は2枚組みで4,000円。「当然こちらの方がコストパフォーマンスが高い」と思って購入したまではよかった。
 さて、冒頭が先生お勧めの曲だったので、気合を入れて聞いてみると、コーラス部分がフェードインで始まると、すぐにワァーっという歓声とともに終わってしまった。「えっ」と動揺しながらジャケットをよくよく見ると、「組曲:青い眼のジュディ(0:33)」とある。もともとスティルスが普通の長さの1曲に治めることができなかったので「組曲」という構成にした長い曲である(ちなみに「ジュディ」とは当時同棲をしていたジュディ・コリンズのことだといわれている)。その曲の終わりのほんの一部をライブアルバムの雰囲気作りで使っていただけだったのだ。肝心のかっこいいギターの部分は聴けずじまいで、アルバムの選択ミスを後悔をしつつも聴き進んでいくことにした。お目当ての曲はともかく、他の曲はどれもギターはかっこよく、ハモリも今まで聞いたことがない新鮮なもので、気がつくと、グイグイとCSN&Yの世界に引き込まれていった。

 元バーズのクロスビー、ホリーズを脱退してイギリスから参加したナッシュ、そして元バッファロースプリングフィールドのスティルスとヤングが組み合わさったユニットは、斬新なギタープレイと複雑なコーラスが特徴。
 普通にギターをチューニングすると、左手でどこも押さえずに(「開放で」と表現する)すべての弦を鳴らしても、調整の取れた和音にはなっていない。チューニングを変えて、開放である和音がなるようにするのがオープン・チューニングである。スティルスはこのオープン・チューニングの名手で、自分だけの独特のパターンをよく使っていた。このため、今まで聴いたことのないようなギターの音となっていたのである。中学1年のときに買った安いヤマキのギターでも、オープン・チューニングにすると気分はもうスティルス。その音に飽きるまで弾き続けていたことはいうまでもない。
 ハモリも、一般的なのは3度のハーモニーだが、4度を多用して、長調なのか短調なのかを表に出さず、浮遊感のある和音構成がこれまたユニーク。ハーモニーの和音だけで、「あっ、CSN&Yだ」とわかるほどだ。

 個性の強いメンバーが集まれば当然衝突も多かったようで、DVDになっている映像には、マリファナでボーとしながらハンモックに揺られているクロスビーに向って、「いいかげんにしろよっ!」と切れるスティルスの姿を見ることもできる。スティルスはスティルスでヤングとは仲が悪く、ツアーの途中で喧嘩が絶えず、後半のツアーキャンセルということも結構あったようだ。その割りには、機会があるたびにともに演奏をし続け、CSN&Y以降でも、スティルス・ヤング・バンドとしての活動などもおこなった。ライブ映像でも、4人で一つのユニットというよりは、曲によって一人でやったり、二人、三人と編成を変えて演奏している。

 本CDはLP同様2枚組みで、一枚目がアコースティック、二枚目がエレクトリックという構成。しかし、アコースティック盤には、新たに4曲追加されているのが嬉しい。ライブでは必ずアンコールの最後にやっていたという"Find The Cost of Freedom"は当然一番最後(二枚目のオーラス)に収録されている。ギター2本がかっこよく絡むインストパートから始まり、ユニゾンでのワンコーラス目の途中からギターの音が消えて、完全なアカペラとなる。ツーコーラス目は3声のハモリ。突然、音空間が上下に広がる快感。パッとコーラスが終わり、(おそらく)ナッシュが”Good Night"といってコンサートは終わりを迎える。

 自分にとってのウエストコースト・サウンドの原点はこの辺りにあるのだろう。

April 14, 2006

●Return To Forever: Romantic Warrior

RTF_romantic.jpg

Chick Corea (p, key, per)
Stanley Clarke (b, per)
Lenny White (ds, per)
Al Di Meola (g, per)

 中学、高校と音楽にどっぷり浸かっていたが、当時の情報源は雑誌とFMラジオ。雑誌はミーハー指向のものを除けばほとんど目を通し、"超絶テクニックのギター"などという文字があろうものならば、「何としてでも聴かなければ」と思ったものである。そんな状況だったので、「バカテクのギタリスト」として脚光を浴びつつあったディメオラがアンテナに引っかかったのも当然の成り行きだった。ディメオラのソロアルバムもいいものがいくつかあるが、ソロ活動前の演奏を追っかけていってたどり着いたのが、チック・コリア率いるリターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)である。

 本作は、後期RTFの最高傑作といってもいい。ネヴィル・ポッターの詩にインスパイアされ、アルバムをトータル構成したもので、確かにストーリー性が感じられる曲展開である。4人が4人ともテクニック抜群で、遊び心にもあふれた演奏は、理屈抜きで楽しめるだろう。レニー・ホワイトのドラムスとディメオラのギターがかなりロック色を濃くしている一方、スタンリー・クラークは時折アコースティック・ベースのアルコ(クラシックのように弓を使っうこと)奏法を交え、”中世の騎士”というイメージに繋げているのも面白い。チック、ディメオラ、スタンリーがいずれもアコースティック楽器を演奏していながら、曲としてはエレクトリックのイメージを感じさせるのは、RTFというトータルユニットの持つマジックかもしれない。

 ディメオラは1979年のライブ・アンダー・ザ・スカイでチック・コリアのバンドメンバーとして初来日をするのだが、必死の思いでチケットを手に入れ、会場の田園コロシアムに出かけた。RTFの再構成に近い、このときの来日メンバーはチック・コリア(key)、アル・ディメオラ(g)、バーニー・ブルネル(b)、トニー・ウィリアムス(ds)という豪華な顔ぶれ。ディメオラ目当ての観客が多かったせいもあってか、彼のアコースティック・ギターソロのコーナーでは、ワンフレーズひいてはワァーという歓声が上がり、演奏としては期待していたほどではなかったのが残念だった。メンバーで一番光っていたのはバーニー・ブルネル。フレットレス・ペースでハーモニックスを多用する奏法には度肝を抜かれた。当時、フレットレス・ベースといえばジャコ・パストリアスというイメージが強かったが、まったく違うスタイルで、「すごい!!」と思わせるユニークさがバーニーにはあった。自分が知らないプレイヤーでも、すごい人がごろごろしているんだなぁと思いながら家に帰ったのをよく覚えている。

 後期RTFのコンセプトは、その後、チック・コリア・エレクトリック・バンドへと繋がっていくものだが、よりロック色の濃いRTFの演奏は、今聞いてもまったく色あせていないのがすばらしい。