Allan Holdsworth (g)
Gordon Beck (p)
アコースティック・ギターとピアノのデュオは思いのほか少ないような気がする。突き詰めて考えれば、ピアノもスティール弦を使い、鍵盤~ハンマーで弦を叩くという発音メカニズムは違うものの、音の質には共通点があることが影響しているのかもしれない。実験したことはないが、それぞれの音のアタック部分を消してしまうと、ピアノなのかスティール弦ギターなのかを識別するのは難しそうな気もする。
最近では、超絶テクニックというと、ヘビーメタル系のギタリストが真っ先にあがることが多いが、私が高校生の頃、フュージョン系の人以外では、なんといってもプログレッシブ・ロックのギタリストが真っ先に思い浮かんだものだ。アラン・ホールズワースはややマニアックながら、コアなファンの多いギタリスト。70年代前半に、プログレバンドのテンペストに参加して以来、ゴング、UKなど、数々のグループに加わりアルバムを残してきた。
「うまい」と聞けば、必ずそのギタリストの演奏を聴こうとしていた高校時代、最初に手に入れたアランのアルバムは『Velvet Darkness』というファーストソロだった。確かにテクニックはすごいのだが、なんだか散漫な印象をぬぐえなかったのだが、いろいろと調べていくと、アラン自身、このアルバムのできには非常に不満で、自分のソロアルバムとしては認めたくないといっていると知った。
あまり良くない第一印象からか、シンセアックスという、ギターとシンセサイザーを組み合わせたような新しい楽器を使っているとか、さまざまな情報が入ってきたにもかかわらず、なんとなく聴かずにきてしまったのであった。
かなり後になってからだが、ギタリストのコンピレーションアルバムで、アランの演奏を聴き、独特のうねるように流れていくフレーズに、彼のことを再認識した。そこで手にしたのが本作だった。期せずして、買った2枚目は実は、彼の2作目で、ファーストソロの2年後にリリースされたものだったのがおかしい。
エレクトリック・ギターをメインにしている人がアコースティック・ギターを演奏する際、おなじようなスタイルで弾く人と、まったくスタイルを変えてしまう人がいる。後者の代表がパット・メセニーだろう。アランは前者のスタイル。ハンマリングとプリングを多用し、音が洪水のようにあふれてくるのは、まさしく彼がエレクトリックでも披露しているものと同じだ。ただ、エレクトリックでの歪み系サウンドとは異なり、生音メインのアコースティックでは、流れるようでありながら音の粒々がはっきりと伝わってくる感覚が面白い。きついテンションノートも使っているが、不思議と濁った感じはなく、するりと耳に入ってくるのは、アラン独特の演奏によるものなのだろう。
ジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートさせたゴードン・ベックによるものが大きいのか、ジャズとロックの要素を非常にうまくミックスした仕上がりになっている。緊張感あふれるフレーズの応酬があるかと思うと、ほのぼのとした曲調もあり、いろいろな雰囲気を楽しむことができる。
昨年には1990年の東京でのライブ盤が発売。気がつくと、時折来日してライブをおこなったりと、現在でもコンスタントに活動をおこなっているようである。新旧交えて、彼の音楽をまた少し追っかけてみようか・・・。